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2015.3.5−6 仙台市 伊達伸明氏によるアートプロジェクト「亜炭香古学」 亜炭の歴史があったんだ!

こんにちは。コールマイン研究室 九州支部の國盛です。
今回は東北のレポートを致します。
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2015年3月5日(木)〜6日(金)
 2012年から、仙台市および仙台市市民文化事業団が主催する伊達伸明氏に
よるアートプロジェクト「亜炭香古学」の現場に赴きました。
伊達伸明さんは、取り壊されることとなった建物から資材を取り、ウクレレ
を作って建物の持ち主に渡す「建築物ウクレレ化保存計画」などで活躍されて
いるアーティストです。2012年からは、仙台市から依頼を受けて、仙台で
戦後まで採炭されていた亜炭の歴史文化に着目した「亜炭香古学」という
アートプロジェクトを行われています。長らく取材したいと思っていた方
でしたが、今回念願叶って現場でお会いすることができました。

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今回は、2015年8月に仙台メディアテークにて開催される大規模な展覧会も
視野に入れながら、旭が丘の日立システムズホール仙台にて、1ヶ月間
アーティストインレジデンスを行われています。

日立システムズホール(元仙台市青年文化センター)は楽都仙台を標榜する
仙台市
が1990年に設立したホールで、シアターやコンサートなどに適した
作りです。
伊達さんのアトリエは2階にありました。 
 
伊達さんは兵庫県生まれ大阪市在住ですが、仙台市にはご実家があるとの
ことで仙台にもゆかりがあり、このプロジェクトが始動しています。

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仙台には、石炭の一種である亜炭が採掘されていました。主に家庭用燃料
として用いられ、地域には中小の炭鉱が複数ありました。戦後復興期には
人々の生活を支える大切な燃料として重宝されましたが、1960年以降の
エネルギー革命によってその歴史には幕を閉じます。大規模炭鉱と異なり、
零細企業によって運営されていたことや、石炭に比べてやや劣る存在という
認識が人々にあったことで語られる機会を失ったまま消滅しかけて
いました。しかし、風呂炊き、炊事、学校の暖房設備といった人々の
日常に介在していた存在であることと、燃焼時に出る独特な香りから、
亜炭は地域の人々にとっては大変懐かしく、思い入れのある存在で
あったそうです。

「このままでは語られることがなくなってしまう」という危機感から
伊達さんはこのアートプロジェクトを企画構想されました。
同時に、亜炭層と一緒に採掘される埋木(うもれぎ)という硬化した
木材から生まれる「埋木細工」という仙台独自の民芸にも着目し、
これらのアーカイヴと再評価を2012年から行っています。
 
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ここには、毎日地元の方や研究者の方などが訪れ、亜炭や埋木細工について
沢山の情報が寄せられるとのことです。現在は、地域の人々が日々持って
きてくださる亜炭の情報や、埋木をどのように活用するか、試行錯誤されて
いる様子でした。ボランティアの方もいらしておりました。仙台市在住の
佐藤さんは、祖母の親戚が埋木細工で生計を立てていたルーツがおありで、
2014年度からスタッフをされていらっしゃるとのことでした。
また、東北芸術工科大学の施楽さんは2012年の開催当初からのスタッフで
同じく祖父が埋木細工に関わっていた背景があるとのことでした。

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伊達さんにはアートプロジェクトに対する姿勢や考え、経年による
プロジェクトの変化や課題など、様々なインタビューに応じて
いただきました。伊達さんは、「地域に介在していく美術は、触媒になる
ことが必要。美術という形を見せないで入りこむことが重要だと思う。
まずは聞き手として徹することで地域の方々の思い出や情報を出来る限り
受け止めたいと思っている。亜炭香古学によって吸い上がった成果が
地域の人にとって“自分たちのもの”と思ってもらえる成果にするべく
自分は加工業者のようなイメージを持っている」と述べられ、敢えて
しばらくの間は作品というモノとしての具現化を避けていたと
述べられました。

「亜炭香古学」と称されるだけあって、文献やヒアリング、インタビュー
や採掘跡への踏査、埋木細工職人への調査等、研究のようなフィールド
ワークを入念に行うと同時に、アーカイヴを公開することにも重視され
ています。複数の大学研究室が介在するようになったという中でも
「研究」にはしたくないという意志も伺えました。
「研究という形にしてしまうと、記憶の中にある美化、ノスタルジー、
勘違い、思い込みといったことは実証の必要性から削がれていって
しまう。しかし地域の記憶や思い入れ、愛着といったことには前者の
ようなものがあってこそなのではないか。美術というあいまいな器
によって、実証的な記憶も、そうでない記憶もすべて受け止め、
地域の人にとっての亜炭の歴史というものを現したい」
と語られました。「亜炭香古学」は、数々のアートプロジェクトの
中でも文脈を非常に重視した事例であり、多くの学びを得ることが
できました。
 
亜炭香古学は、仙台市市民文化事業団の薄井さんと二人三脚で
行われており、薄井さんの働きによって、よりプロジェクトが地域に
寄り添ったものになっていることを感じました。
薄井さんには滞在のご連絡時から大変お世話になりました。
 

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本日で東日本大震災から丸四年が経ちます。仙台メディアテークで開催
されている「3がつ11にちをわすれないためにセンター」では、
大規模な「レコーディングインプログレス」展が開催されていました。
同展に携わった北野さんにご案内をいただきながら、伊達さん、薄井さん、
メディアテークの清水さん、建築士の齊藤さんと展示を拝見致しました。
看板はとても川俣正風! 展示は大変良いもので、見ていて涙が出ました。
それらは非常に淡々とした記録でもあります。しかし、マスメディアでは
語られなかったパーソナルな記憶が、即物的に発信されては消え行くSNS
とはまた違う形で丁寧に集積されており、アートという視点の強みと
優しさを感じ、考えさせられるものでした。

3がつ11にちをわすれないためにセンター
http://recorder311.smt.jp
 
地域の形成の根幹に関わる歴史文化を、一方では掘り起こし、また一方
では風化しないように伝えていく際に、アートの視点というのは非常に
個人的な視点をも共有財産へと変えてゆく大きな力があると感じました。
現地でお世話になった皆さま、本当にどうもありがとうございました。


 

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